二重価格表示の違反事例を徹底解説!景表法に基づく表記のNGパターンとは

企業法務コラム

「通常価格○○円のところ、今だけ△△円!」といった「二重価格表示」は消費者に割安感を印象付ける効果的な販促手法です。しかし、不適切な表示方法は景品表示法違反となるリスクがあります。本記事では、二重価格表示の基本から違反事例、景品表示法に基づく適切な表示方法について具体的にご紹介します。

二重価格表示とは?

二重価格表示とは、商品やサービスの価格を表示する際に、販売価格とそれより高い「比較対照価格」を並べて表示する広告手法です。たとえば「メーカー希望小売価格10,000円のところ、当店では7,000円」といった表示が典型例です。

この表示方法は、消費者に「お得感」や「値引き感」を与え、購買意欲を高める効果がある一方で、不適切な表示によって消費者を誤認させるリスクもあります。そのため、景品表示法では「有利誤認」を防止する観点から規制の対象となっています。

景品表示法第5条で禁止される「優良誤認」と「有利誤認」のうち、二重価格表示は主に「有利誤認」に関わる問題として扱われます。実際より安くなったと消費者に誤解させる表示は違法となるのです。

二重価格表示に関しては、消費者庁が「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」というガイドラインを公表しており、事業者はこれに従った表示を行う必要があります。

参考:消費者庁「二重価格表示」

二重価格表示で使われる比較対照価格の種類

二重価格表示で使用される比較対照価格には、主に過去の販売価格(旧価格や元値など)、メーカー希望小売価格(定価)、競合店舗の販売価格、将来の販売予定価格、市価や相場価格といった種類があります。これらはそれぞれ適切な使用条件が異なるため、事業者は注意が必要です。

比較対照価格を使用する際は、それぞれの表示に関する景表法上のルールを遵守しなければなりません。特に多いのは「過去の販売価格」を比較対照価格として使用するケースですが、これには「過去8週間ルール」という重要な基準があります。

景品表示法における二重価格表示の基本的な考え方

景品表示法では、二重価格表示について、比較対照価格が「真実」であり、それによって実際の取引条件よりも「著しく有利」と消費者に誤認させない限り問題ないと考えています。

しかし、比較対照価格が実際と異なる場合や、比較対照価格と販売価格の差が実際よりも大きく見えるような表示方法は、不当表示として規制の対象となります。

消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するような価格表示は、たとえ技術的に「嘘」ではなくても、景表法違反となりうる点に注意が必要です。

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二重価格表示の主な違反パターンと事例

二重価格表示における景品表示法違反の具体的なパターンを見ていきましょう。これらのパターンを理解することで、自社の広告が法律に抵触するリスクを大幅に減らすことができます。

過去の販売価格を比較対照価格とする際の違反事例

過去の販売価格を比較対照価格として使用する場合、最も注意すべきは「過去8週間ルール」です。消費者庁のガイドラインでは、比較対照価格として表示できるのは、「最近相当期間(通常8週間)にわたって販売されていた価格」とされています。

具体的には、広告掲載直前の8週間のうち、少なくとも4週間以上その価格で販売されていた実績が必要です。また、その価格での販売量が著しく少なかった場合も問題となる可能性があります。

短期間だけ高い価格で販売した後、すぐに「値下げ」と称して通常価格で販売するという手法は典型的な違反パターンです。以下に具体的な違反事例を挙げます。

【違反事例1:美容クリニックのキャンペーン広告】
あるクリニックが「通常価格50,000円のところ、今月限定30,000円」と広告していましたが、実際には「通常価格」として掲げた50,000円での施術実績はわずか2週間しかなく、しかも予約数もごくわずかでした。この場合、「過去8週間ルール」に反するため違反となります。

【違反事例2:ECサイトの期間限定セール】
ある販売業者が「定価15,800円→セール価格9,800円」と表示していましたが、実際には15,800円で販売していた期間は8週間のうちわずか1週間だけであり、ほとんどの期間は11,800円前後で販売していました。この場合も「過去8週間ルール」に違反します。

メーカー希望小売価格に関する違反事例

メーカー希望小売価格(定価)を比較対照価格として使用する場合は、そのメーカー希望小売価格が実際に市場で機能しているかどうかが重要です。特に以下のようなケースは違反となります。

【違反事例3:実在しない希望小売価格の表示】
ある販売店が「メーカー希望小売価格20,000円のところ、当店では14,000円」と表示していましたが、実際にはそのメーカーは希望小売価格を設定していませんでした。これは明らかな虚偽表示として違反となります。

メーカーが希望小売価格を公表していない、または撤廃した商品について「メーカー希望小売価格」と表示することは景表法違反の対象となるため、事前確認が不可欠です。

【違反事例4:形骸化した希望小売価格の利用】
ある化粧品販売店が「メーカー希望小売価格12,000円→7,800円」と表示していましたが、実際にはその化粧品が希望小売価格で販売されている実例はほとんどなく、市場価格は8,000円前後で形成されていました。このように市場で全く機能していない希望小売価格を使用することも問題となります。

将来の販売予定価格に関する違反事例

「今だけ特別価格」として現在の安い価格と、将来値上げする予定の価格を比較する表示も、適切に行わなければ違反となります。

【違反事例5:値上げ予定のない「期間限定価格」】
あるクリニックが「期間限定特別価格!通常38,000円のところ、9月末まで19,800円」と広告していましたが、10月以降も同じ19,800円で提供し続けていました。将来の販売価格を比較対照価格とする場合、その価格で実際に販売する確実な計画がなければ違反となります。

「期間限定」と謳いながら継続的に同じ価格で販売し続けるケースは、消費者庁の監視対象となりやすい違反パターンです。特にECサイトでは容易に価格履歴を追跡されるため注意が必要です。

【違反事例6:値上げ期間が極端に短い場合】
ある販売店が「10月1日より価格改定。9月中なら旧価格8,000円→5,000円」と表示し、10月1日に実際に8,000円に値上げしたものの、わずか3日後には再び5,000円に戻した場合も、実質的に消費者を誤認させる表示として問題視される可能性があります。

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具体的な行政処分事例から学ぶ二重価格表示違反

実際に消費者庁や公正取引委員会が措置命令や課徴金納付命令を行った事例を紹介します。二重価格表示の違反がどのように判断されるのかを理解しましょう。

株式会社ジャパネットたかたに対する課徴金納付命令

2020年、消費者庁は株式会社ジャパネットたかたに対し、5,180万円の課徴金納付命令を出しました。この命令は、同社が供給するエアコンに関する二重価格表示が景品表示法第5条第2号に該当すると判断されたことに基づいています。

ジャパネットたかたは、会員向けカタログや新聞折込チラシ、ダイレクトメール、自社ウェブサイトなどで、「ジャパネット通常税抜価格 79,800円」などと表示していましたが、実際には表示された比較対照価格での販売実績がほとんどなく、「値引きがあったかのように誤認させる」表示と判断されました。

この事例から、大手企業であっても二重価格表示の違反は厳しく処分される可能性があること、また課徴金額は売上高に比例するため高額になりうることがわかります

大手家電量販店の二重価格表示違反事例

ある大手家電量販店は、チラシやウェブサイトで「当店通常価格」と「特価」を併記した二重価格表示を行っていましたが、「当店通常価格」とされた価格で実際に販売された実績がほとんどなく、措置命令の対象となりました。

この事例の特徴は、「当店通常価格」という独自の表現を用いていたことです。しかし消費者庁は、そのような独自の表現であっても、消費者に「通常はその価格で販売されている」という印象を与える表示は、実際の販売実績がなければ違反になると判断しました。

「特価」「セール価格」「限定価格」などの表現と比較対照価格を組み合わせる場合は、その比較対照価格が実際の取引実態を反映したものである必要があります。独自の名称を用いたとしても、実質的に二重価格表示と判断される可能性があることに注意しましょう。

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二重価格表示の具体的なNGパターン一覧

以下のパターンは景品表示法違反となる可能性が高いため、広告制作時に必ず確認しましょう。

過去の販売価格に関するNGパターン

過去の販売価格を比較対照価格として使用する際は、以下のようなパターンが違反となります。

NGパターン具体例
過去8週間ルールに違反8週間のうち4週間未満しか販売していない価格を「通常価格」と表示
販売実績が極めて少ない形式上は4週間以上表示していても、その価格での販売数がごくわずか
最終販売日から長期間経過2ヶ月以上前に設定していた価格を「通常価格」として表示
セール価格が常態化ほとんどの期間を「セール価格」で販売し、高い「通常価格」での販売は例外的

過去の販売価格を使用する際は、その価格が「実際の取引の中で通常用いられている価格」であることが重要です。形式的に高い価格を設定しただけでは、比較対照価格として認められません。

メーカー希望小売価格に関するNGパターン

メーカー希望小売価格を比較対照価格として使用する際は、以下のようなパターンが違反となります。

NGパターン具体例
存在しない希望小売価格メーカーが希望小売価格を設定していない商品について「メーカー希望小売価格」と表示
既に撤廃された希望小売価格メーカーが希望小売価格制度を廃止した後も、以前の価格を「メーカー希望小売価格」と表示
形骸化した希望小売価格市場での実勢価格が大幅に下回っており、希望小売価格が市場で全く機能していない
希望小売価格の意図的な誇張実際のメーカー希望小売価格より高い金額を「メーカー希望小売価格」として表示

メーカー希望小売価格を使用する場合は、そのメーカーが公式に設定・公表している価格であること、そして市場において実際に機能している価格であることを確認する必要があります

市価・競合他社価格に関するNGパターン

市価や競合他社の価格を比較対照価格として使用する際は、以下のようなパターンが違反となります。

NGパターン具体例
根拠のない市価表示「市価10,000円のところ、当店では7,000円」と表示するが、実際の市場価格の調査が不十分
特殊な条件での価格比較ポイント還元や特典付きの自社商品と、それらがない他社商品を単純比較
異なる商品同士の比較仕様や品質が異なる商品同士(新品と中古品、正規品と並行輸入品など)の価格を比較
一部の高額店舗のみを参照市場全体の平均価格より著しく高い一部店舗の価格のみを「他店価格」として表示

市価や競合他社価格を使用する場合は、同一または同等の商品について、一般的な取引条件で比較することが重要です。また、「他店では○○円」という表示をする場合は、具体的な調査に基づく客観的な根拠が必要です。

将来の販売予定価格に関するNGパターン

将来の販売予定価格を比較対照価格として使用する際は、以下のようなパターンが違反となります。

NGパターン具体例
根拠のない将来価格「10月1日より12,000円に値上げ。今なら9,800円」と表示するが、実際には値上げする確実な計画がない
極めて短期間の高額価格設定「キャンペーン終了後は30,000円」と表示し、形式上は値上げするが、すぐに別のキャンペーンで値下げ
恒常的なキャンペーンの繰り返し「期間限定」を謳いながら、実質的には常に同じ「特別価格」で販売し続けている
値上げ計画の変更を適切に告知しない「9月末まで特別価格」と表示した後、値上げ計画を撤回したにもかかわらず、その旨を告知しない

将来の販売予定価格を使用する場合は、その価格で実際に販売する確実な計画があることが必須条件です。単に消費者を誘引するための「見せかけの将来価格」は違反となります。特にキャンペーンや期間限定サービスでは注意が必要です。

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景表法違反を避けるための二重価格表示の正しい方法

ここまで違反事例やNGパターンを見てきましたが、適切に行えば二重価格表示は有効な販促手法となります。ここでは、景表法に違反しない二重価格表示の正しい方法を解説します。

過去の販売価格を使用する場合の正しい表示方法

過去の販売価格を比較対照価格として使用する場合は、以下のポイントに注意しましょう。

過去の販売価格を使用する際は、「いつからいつまでの価格か」を明示することで消費者に誤認を与えるリスクを大幅に減らすことができます。具体的な日付を入れることで、透明性が高まり信頼性も向上します。

例えば、「当店における2023年1月から7月の通常価格5,400円のところ、8月限定で4,320円にて提供」や「旧価格7,980円(2023年4月1日から7月31日まで販売)から新価格6,980円に変更」といった具体的な期間を明示した表示が適切です。

過去の販売価格を使用する際は、「過去8週間ルール」を満たしていることが基本です。また、その価格での販売実績が十分にあることも重要なポイントとなります。

メーカー希望小売価格を使用する場合の正しい表示方法

メーカー希望小売価格を比較対照価格として使用する場合は、以下のポイントに注意しましょう。

メーカー希望小売価格を使用する際は、そのメーカーが公式に設定・公表している価格であることを確認し、必要に応じて「〇〇(メーカー名)希望小売価格」と明示するとよいでしょう。

例えば、「〇〇(メーカー名)希望小売価格8,800円(税込)から特価7,480円(税込)」といった表示が適切です。

形骸化した希望小売価格は使用を避けるべきです。市場の実勢価格が希望小売価格を大きく下回っている場合は、別の比較対照価格を検討しましょう。特に家電製品やブランド品など、希望小売価格と市場価格の乖離が大きい商品カテゴリでは注意が必要です。

競合他社の価格や市価を使用する場合の正しい表示方法

競合他社の価格や市価を比較対照価格として使用する場合は、以下のポイントに注意しましょう。

他社価格や市価を使用する場合は、同一または同等の商品について、一般的な取引条件で比較することが重要です。また、具体的な調査に基づく客観的な根拠が必要です。

例えば、「当社調べ、東京都内5店舗の平均価格9,200円から当店価格7,800円へ」、「A社・B社・C社の同等商品平均価格6,500円(2023年8月1日調査)から当院5,500円へ」といった具体的な調査内容と時期を明示した表示が適切です。

価格比較を行う際は、調査方法や調査時期を明記することで透明性が高まります。また、定期的に市場価格の調査を行い、表示を更新することも重要です。特に価格変動の激しい商品カテゴリでは、調査の頻度を高めましょう。

将来の販売予定価格を使用する場合の正しい表示方法

将来の販売予定価格を使用する場合は、その価格で実際に販売する確実な計画があることが必須条件です。また、具体的な値上げ時期を明示することも重要です。

適切な表示例としては、「9月1日より価格改定。新価格12,800円から8月中なら9,800円で販売」といった具体的な改定時期を明示した表示が挙げられます。

期間限定の特別価格を表示する場合は、キャンペーン終了後に確実に表示通りの価格に戻すことが求められます。もし計画が変更になった場合は、速やかに表示を修正する必要があります

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業種別・二重価格表示の注意点

二重価格表示の規制は全ての業種に適用されますが、業種によって特に注意すべきポイントが異なります。ここでは、主要な業種別の注意点を解説します。

ECサイト運営者が注意すべきポイント

ECサイトは特に二重価格表示の監視が厳しい業界です。以下のポイントに注意しましょう。

ECサイトでは価格表示が消費者の購買判断に直結するため、適切な二重価格表示が特に重要です。また、価格履歴が比較的簡単に追跡できるため、不適切な表示は発見されやすいという特徴があります。

ECサイトでは商品ごとの価格履歴を適切に管理・記録し、二重価格表示の根拠を明確にできる体制を整えることが重要です。特に大量の商品を扱うサイトでは、価格管理システムの導入を検討すべきでしょう。

例えば、セールの頻度が高いサイトでは「通常価格」の実態が曖昧になりやすいことがあります。また、複数のモールに出店している場合はサイトごとに価格が異なると問題となる可能性があります。さらに、価格比較サイトに掲載される場合は他社との価格差が明確になるため表示に注意が必要です。加えて、定期的に価格改定を行う場合には過去の価格履歴を適切に管理する必要があります。

ECサイトでは特に「常時セール状態」を避け、定期的に通常価格での販売期間を設けることで、二重価格表示の根拠を維持することが重要です。

医療機関・クリニックが注意すべきポイント

医療機関の広告は、景品表示法に加えて医療法の規制も受けるため、価格表示については特に慎重な対応が求められます。患者の自主的かつ合理的な選択を妨げる表示は避けるべきです。

医療機関のキャンペーンでは「通常価格」の根拠を明確にし、キャンペーン終了後は確実に表示通りの価格に戻す計画を立てることが重要です。特に美容医療では価格が重要な判断材料となるため、適切な表示が求められます。

例えば、「モニター価格」を通常価格と比較する場合は、その条件の違いを明確に表示する必要があります。また、「初回限定価格」と表示する際は2回目以降の価格を明確に示すべきです。さらに、「○○円OFF」と表示する場合には値引き前の価格の根拠を明確にし、他院との価格比較を行う場合は同等の施術や条件での比較が求められます。

医療機関の広告では、価格だけでなく施術内容や条件も含めて適切に表示することが重要です。特に、保険適用外の自由診療については価格表示に慎重な対応が求められます。

小売店・実店舗が注意すべきポイント

実店舗での二重価格表示も景品表示法の規制対象です。以下のポイントに注意しましょう。

実店舗では、チラシやPOP、看板などさまざまな媒体で価格表示が行われます。これらすべてが景品表示法の規制対象となるため、統一した対応が必要です。

例えば、店頭POPとチラシで価格表示が異なる場合は問題になる可能性があります。また、「○○周年セール」など頻繁に開催されるイベントでの二重価格表示には注意が必要です。さらに、「閉店セール」や「最終処分」といった表現を使用する場合は、その事実と整合性のある表示が求められます。複数店舗を展開している場合は店舗ごとの価格差と二重価格表示の整合性にも注意が必要です。

実店舗では特に、従業員への教育・研修を通じて景品表示法の理解を深め、不適切な表示を防止する体制づくりが重要です。

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二重価格表示違反時の罰則と対応方法

二重価格表示が景品表示法に違反していた場合、どのような罰則があるのか、また万が一問題が発生した場合の適切な対応方法について解説します。

景品表示法違反に対する罰則の種類と事例

景品表示法違反に対しては、まず軽微な違反の場合、消費者庁による指導や警告が行われます。これは公表されないケースが多いものの、改善を求められます。より重大な違反の場合には、措置命令や課徴金納付命令、さらには刑事罰といった対応がとられます。

措置命令とは、違反行為の差止めや再発防止策の実施、一般消費者への周知などを命じるもので、企業名と違反内容が公表されます。課徴金納付命令では2016年4月以降の違反行為に対して、対象商品・サービスの売上高の3%の課徴金が課されることがあります。さらに、措置命令に従わない場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される刑事罰が科される可能性があります。

措置命令と課徴金納付命令は公表されるため、企業イメージに大きな影響を与えます。特に課徴金は対象商品・サービスの売上高の3%という高額になる可能性があるため、コンプライアンス体制の整備が重要です。また、売上規模の大きい企業では課徴金額も高額になる傾向があります。

違反が疑われる場合の適切な対応方法

自社の広告表示に景品表示法違反の疑いがある場合、以下のような対応が推奨されます。

違反が疑われる状況になった場合、迅速かつ適切な対応が重要です。対応が遅れたり不誠実だったりすると、さらなる信頼低下や厳しい処分につながる可能性があります。

問題発覚時は、すぐに問題のある表示を修正・中止し、必要に応じて消費者への適切な情報提供を行うことが重要です。また、原因究明と再発防止策の策定・実施も不可欠です

具体的には、まず問題のある表示は即時に修正または中止し、その後いつからどのような表示をどの媒体で行っていたかを詳細に調査します。次に、景品表示法に詳しい顧問弁護士や専門家に相談し、適切な対応策を検討しましょう。違反が明らかな場合には、消費者庁への自主申告を検討することも有効で、課徴金減免の可能性があります。

加えて、必要に応じて消費者に対して正しい情報を提供し、社内では再発防止策としてチェック体制の強化や従業員教育を実施します。

なお、2016年の景品表示法改正により、課徴金減免制度が導入されました。自主申告による減免や返金による減免制度があるため、違反が発覚した場合は専門家に相談の上、これらの制度の適用可能性も検討するとよいでしょう。

二重価格表示の適法性を確保するための社内体制づくり

二重価格表示の違反を未然に防ぐためには、適切な社内体制の構築が重要です。

景品表示法違反を防止するためには、単に法律の知識を持つだけでなく、組織的な取り組みが必要です。特に広告宣伝部門だけでなく、経営層も含めた全社的な意識向上が重要です。

景品表示法の違反防止には、社内の価格管理体制の整備と定期的なチェックが不可欠です。特に二重価格表示を行う際は、比較対照価格の根拠資料を保管し、定期的に見直す仕組みを作りましょう。ECサイトや医療機関では、広告担当者への定期的な教育も重要です。

社内体制づくりのポイントとしては、まず二重価格表示を含む広告表示全般についての社内ルールを明文化した表示管理規程を策定することが挙げられます。また、広告表示の適法性をチェックする責任者を設置し、過去の販売価格や比較対照価格の根拠資料を適切に保管・管理する価格履歴の管理体制を整備します。

加えて、景品表示法の基本知識や最新の違反事例について担当者に定期的に教育を行い、二重価格表示を行う際のチェックポイントをリスト化して活用します。さらに、重要な広告キャンペーンについては顧問弁護士や専門家にチェックを依頼することも推奨されます。

これらの取り組みを通じて、景品表示法違反のリスクを最小化し、消費者からの信頼を高めることができます。特に医療機関やECサイトなど、価格表示が重要な役割を果たす業種では、より厳格な管理体制が求められます。

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まとめ

本記事では、二重価格表示の違反事例と景品表示法に基づく表記のNGパターンについて詳しく解説してきました。販売促進に効果的な二重価格表示ですが、不適切な表示は景品表示法違反となり、措置命令や課徴金納付命令などの厳しい処分を受ける可能性があります。

  • 二重価格表示は「比較対照価格」と「販売価格」を並べて表示する広告手法で、不当な有利誤認を与える場合に違反となる
  • 過去の販売価格を比較対照価格とする場合は「過去8週間ルール」を満たす必要がある
  • メーカー希望小売価格や市価を使用する場合は、その根拠が明確であることが重要
  • 将来の販売予定価格を使用する場合は、実際にその価格で販売する確実な計画が必要
  • 違反した場合、課徴金納付命令(売上高の3%)などの厳しい処分がある

適切な二重価格表示を行うためには、社内の価格管理体制の整備と定期的なチェックが不可欠です。景品表示法に関する疑問や懸念がある場合は、専門家に相談することも検討しましょう。

弁護士法人なかま法律事務所では、景品表示法を含む各種広告規制に関する法的アドバイスを提供しています。「クライアントと向き合うこと」をポリシーとし、ECサイト運営企業やクリニック経営など、広告表示が重要な業種に対する専門的なサポートを行っています。景表法違反を未然に防ぐための広告チェックや社内体制構築のアドバイスなど、お気軽にご相談ください。

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