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【弁護士が解説】ハラスメントの種類と具体的な対応方法のポイント

2022年02月09日

ハラスメントとは

ハラスメント対策の重要性

SNSが発展したこともあり,労働者の声の影響力は昔に比べ大きくなっています。

ハラスメントに対する社会の目も厳しく,ハラスメント被害を訴える従業員がSNSで呟けば,直ちに拡散し,週刊誌やメディアの格好の的となり,企業に対して社会的非難が集中します。

こうなると,顧客が離れ,採用も難しくなります。ハラスメントは,企業の体力を奪う大きな問題になり得ます。

他方で,ハラスメントの加害者は,自覚症状がないことが多いため,社内或いは第三者による研修等を通じた意識改革,社内文化の変革,加害者を生まない仕組みづくりが重要となります。

 

ハラスメントの定義

ハラスメント(Harassment)とは「相手に対する発言や行動によって、不快な気持ちにさせたり、脅威に感じさせたりすること」を言います。

セクハラ,パワハラ,マタハラ,ソジハラ等々「○○ハラ」と呼ばれる行為は枚挙に暇がありませんが,本記事では,代表的なハラスメントである,

セクハラ,パワハラ,マタハラについて詳しく説明することとします。

 

ハラスメントの種類 ①セクハラ

セクハラとは

男女雇用機会均等法11条1項は,「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と規定しています(傍点は筆者)。

さらに,同条2項に基づいて定められたセクシャルハラスメント指針によれば,男女雇用機会均等法上の「職場におけるセクシャルハラスメント」とは,「職場」において行われる、①「労働者」の意に反する 「性的な言動」に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、②「性的な言動」に より就業環境が害されることと定義されています。

上記①を「対価型セクシャルハラスメント」,②を,「環境型セクシャルハラスメント」といいます。

 

①対価型セクシャルハラスメント

労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、 降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換 などの不利益を受けることです。

例えば,典型例として,

・経営者(或いは人事権を有する管理者)が従業員に,職場内で性的関係を迫り,拒否された腹いせにその労働者を解雇したり不利益処分をする

・出張中の車中等において,上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため,腹いせに,労働者について不利益な配置転換をする

・事業主が職場で日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者に対し,降格処分その他不利益処分をする

といったことが例として挙げられます。

 

②環境型セクシャルハラスメント

労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮 に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。

例えば,典型的な例として,

・職場において上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下する

・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかない

・事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できない

といったことが挙げられます。

 

これって当てはまる?セクハラチェックリスト

以下のリストに思い当たる言動をしている方は,いつセクハラ加害者になってもおかしくありません(もうなっているかもしれません)。

直ちに言動を修正しましょう。


□容姿やプロポーションについてあれこれ言う
□性的な冗談を言う
□肩、手、髪に触る
□職場の宴会で上司のそばに座席を指定したり,お酌やデュエットを強要する
□女性労働者にのみお茶くみを強要する
□「おじさん」「おばさん」「○○クン」「○○ちゃん」と呼ぶ
□「女性は職場の花でよい」「男のくせに、女のくせに」と言う
□「結婚はまだか」「子どもはまだか」と尋ねる

□職場でヌード写真やグラビア写真を貼っている(或いは見える位置に置いている)

□性的含みのあるメールやラインを送ったことがある

□仕事に関係なく食事に誘う

□性経験や性生活について質問する

□体調が悪い女性に「今日は生理か」「更年期か」等と言う

□「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」など差別的な発言をする

□身体を執拗に眺めまわす

(厚労省「自主点検―セクシュアルハラスメントについてのアンケート例」参考)

 


 

ハラスメントの種類 ②パワハラ

パワハラとは

職場におけるパワーハラスメントとは、改正労働施策総合推進法(令和元年6月5日公布)によれば,以下の3つの要素をすべて満たすものとしています。

・優越的な関係を背景とした言動であって

・業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

・労働者の就業環境が害されること

 

また、パワハラは大きく分けて6類型に分類されます。


身体的な攻撃

精神的な攻撃

・人間関係からの切り離し

過大な要求

過小な要求

個の侵害


 

パワハラが起きやすい職場として、ざっくり言えば,双方向コミュニケーションが少なく,ハードワークな職場はハラスメントが起きやすい傾向にあります。

・上司と部下の双方向のコミュニケーションが少ない職場

残業が多い,有給が取りにくい職場

失敗への許容度が低い職場

・(悪い意味での)体育会系の企業風土がある職場

 

具体例

・罵声を浴びせる

例)給料泥棒,性格が暗い,バカ,死んでしまえetc

・指導中机を蹴る,ファイルを机にたたきつける

・ほかの従業員の前に呼び出し,長時間大声で叱責する

・一人だけ職場のグループLINEから外す

・回覧物を回さない

・明らかに終わらない量の仕事を押し付ける

・ひたすら掃除,書類整理ばかりやらせる

・弁当を買いに行かせたり,週末自分の家の掃除をやらせる

・業務時間外の業務連絡に出るように強制する

 

これって当てはまる?パワハラチェックリスト

以下当てはまるものにチェックをしてみましょう。あなた自身或いはあなたの職場で,3つ以上当てはまる場合は要注意です。


□部下や年下の人から意見を言われたり、口答えをされたりするとイラッとする。

□自分が間違っていたとしても、部下に対して謝ることはない。

□部下がミスをすると、すぐその場で叱る。

□厳しく指導をすることで部下は育つと思う。

□仕事のできない部下には、できるだけ仕事を与えない方がいい。

□業績を上げるため、終業時刻間近でも残業を要請するのは当然だと思う。

□部下が自分の顔色を窺っているような雰囲気がある。

□部下の家庭環境などプライベートな情報も把握しておくべきだ。

□自分は短気で怒りっぽい方だと思う。

□出退社時、挨拶をする人がほとんどいない。

□社長や管理職は、職場にはパワハラは存在しないと考えているようだ。

□業務上のノルマが厳しく、達成できなかった時のペナルティが大きい気がする。

□誰かの陰口や噂を耳にすることが多い。

□上司・先輩に対して、意見や反論が言いづらい。

□職場内で問題が起きても、話し合って解決しようという雰囲気がない。

□上下関係は絶対的だ。

□無視をされたり、仲間はずれをされていると思われる社員を見たことがある。

□今の職場は、厳しい指導で人は育つという意識が強いと思う


 

ハラスメントの種類 ③マタハラ

マタハラとは

マタハラといえば,妊娠出産に関する女性に対する嫌がらせ,というイメージがありますが,若干異なります。

男女雇用機会均等法及び育児介護休業法によれば,妊娠,出産のみならず,育児・介護休業等に関するものも対象になる,

つまり,育児休業や介護休業を取得する男性もマタハラ被害を受ける対象になる,とされています。

すなわち,マタハラとは,対象者の性別問わず,職場における妊娠・出産,育児休業,介護休業等の取得に伴い,嫌がらせをしたり,不利益な取り扱いをすることを指します。

 

具体例

㋐産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた。

㋑時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」といわれた

㋒育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得 ない」と言われた

㋓介護休業について請求する旨を周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない。お前もそうすべき。」と言われた

㋔上司に妊娠を報告したところ「他の人を雇うので辞めてもらうしかない」と言われた

㋕「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられないと言われた

㋖「妊娠するなら忙しい時期は避けろ」と言われた。

㋗「妊婦や介護しているやつにたいした仕事はさせられない」と言われた

㋘上司・同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」言われた

 

マタハラに該当しない例

他方で,業務上の必要性に基づく以下のような場合は,直ちにハラスメントには該当しないとされています。

㋐ 業務体制を見直すため、育児休業をいつからいつまで取得するか確認すること。

㋑ 業務状況を考えて、「次の妊婦健診はこの日は避けてほしいが調整できるか」と確認すること。

㋒ 同僚が自分の休暇との調整をする目的で休業の期間を尋ね、変更を相談すること。

㋓ 上司が、長時間労働をしている妊婦に対して、「妊婦に長時間労働は負担が大きいだろうから、業務分担の見直しを行い、あなたの残業量を減らそうと思うがどうか」と配慮する。

㋔ 「妊婦には負担が大きいだろうから、少し楽な業務にかわってはどうか」と配慮 する。

㋕ 「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」と配慮する。

 

各種ハラスメントへの対応方法

ここでは,加害者側の対応として,どうしたら加害者にならないか,

企業としてどのように対応すれば各種ハラスメントが防げるか,ということを書いておきたいと思います。

セクハラ対策のポイント

自分が無意識にセクハラをしているのでは?と常に自問自答する

セクハラ加害者の多くは自分がセクハラをしているとは思っていません。恋愛感情を持たれていると勘違いしたり,

屈折した恋愛感情によるものであったり,親しくなろうとして冗談だと思って言っていたり,「良かれと思ってやった」という人が多いように感じます。

相手が嫌がっていないか,自分の言動はセクハラに当たらないか,常に意識することが何よりの予防策と言えます。

 

定期的に全社員を対象にアンケートを実施する

セクハラ被害は,事の性質上,社外や他の従業員の目につかない所で行われたり,被害者が我慢してしまっていたりして,表沙汰になりにくいものです。

そこで,定期的に匿名でセクハラに関するアンケートを実施して,セクハラ被害の拡大を防ぎ,加害者が特定できる場合は適切な指導を行いましょう。

 

パワハラ対策のポイント

根本的には,相手(部下)の立場で物事を考えて,相手(部下)の話をよく聞くことです。

自分の感情をぶつけない

上司の仕事は,部下の目標達成を支援し,会社の業績に貢献することです。「怒る」と「叱る」は別物です。

「怒る」ことは自分勝手な感情の発露ですが,「叱る」ことは,部下の目標達成の為必要かつ適切な方法で行う限り,パワハラにはなりません。

むしろ管理職として必要な職務と言えます。

改善するのは,部下の「行動」であり「人格」ではありません。業務と関係ない部下の人格を非難するような発言は厳に慎みましょう。

 

短かいコミュニケーションを増やす

多くのハラスメント被害は,上司と部下のコミュニケーションギャップにより発生します。挨拶をする,数分雑談をする,そんなレベルでも構いません。

部下とのコミュニケーションの頻度を増やしましょう。半年に1度の数時間のミーティングより,週に1度の15分のミーティング,1日一回数分の会話が

コミュニケーションギャップを減らすことに繋がります。とにかく短くても,些細なことでもよいので,コミュニケーションの回数を意識しましょう。

 

汚い言葉は使わない

自分にそのつもりがなくても,受け取り方によっては,威圧的,攻撃的,否定的な態度に受け取られることはしばしばあります。

普段から冗談でも「バカ」「お前」といった汚い言葉は使わないように意識しましょう。

 

ミスはその都度すぐ指摘する

部下のミスに気付いたらその都度できるだけタイムリーに指摘したほうが響きます。

何週間,何か月も経ってから指摘しても,腹落ちしなかったり,「いまさら言われても・・」と思ってしまうもの。

最悪なのは,半期に一度の査定でまとめて指摘して,低い評価を付けることです。

「その時に言ってくれたら改善したのに・・」と部下の不満は募る一方。

こういったコミュニケーションギャップがパワハラを引き起こすきっかけになり得ます。

 

マタハラ対策のポイント

マタハラを正しく理解する

パワハラ・セクハラに比べると,「マタハラ」に当たる言動を具体的にイメージできていない人が多い印象を受けます。

まずは,性別,役職問わずマタハラについて正しく理解することから始めましょう。

 

「困ったときは助け合い」の精神を忘れないこと

確かに業務が忙しいときに,育休産休で休む社員がいれば「なんで忙しい時に・・」と内心思ってしまうかもしれません。

しかし,子どもがいない方はこれから子宝に授かり,自分が産休育休を取ることもあるでしょう。

子どもがいなくとも,介護休業を取らざるを得ないこともあるでしょう。そのようなときに,自分が休みやすい環境があった方がよいでしょう。

自分が困ったときはみんなに助けてもらう,人が困っているときはみんなで助け合う,そんな意識で働いていればマタハラ被害は大きく減らせるでしょう。

 

ハラスメント全般における対策のポイント

ハラスメントは断じて許さないトップの明確なメッセージを発信する

企業風土の変革は,まずトップの姿勢とメッセージ発信から始まります。

 

各ハラスメントの類型に応じた規程(例:セクハラ禁止規程等)を作成,周知する

仕組みづくりの基本はルール作りから。ルールは作るだけではなく,

社内メーリングリストやイントラネット,掲示板等で周知することを忘れずに。

 

経営者,管理職,従業員が,ハラスメントについての知識をみにつける

経営者,管理職世代の方は,どうしても昔ながらのコミュニケーション方法で部下と接してしまいがち。

時代に合わせた部下の管理育成手法を学びましょう。

 

ハラスメント被害者が相談しやすい環境づくり(相談窓口の設置及び周知)

仕組みをいくら整えても,ハラスメント被害を100%抑止することは難しいものです。

万が一ハラスメント被害が生じる或いは生じそうな場合,被害を受けた人が速やかに相談できる窓口を設置しましょう。

相談できる窓口があることが,被害の予防・抑止につながります。

 

より詳細な対応方法に関してはこちらの記事で詳細に解説しておりますのでご確認ください。

 

最後に

当事務所ではハラスメント対策に向けた社内体制の構築に向けて、下記のようなサポート内容をご用意しております。

ハラスメント相談窓口サービス

2022年4月に中小企業にも適用となるパワハラ防止法の改正にともない義務化されている相談窓口の設置について

弊所が「外部相談窓口」となって、貴社の従業員のハラスメント相談に対応をいたします。

顧問弁護士とは異なり、中立的な立場として従業員の方の相談に対応させていただきます。

詳細についてはこちらよりご確認いただけますので、サポート内容にご興味のある企業様は、ぜひご相談ください。

 

顧問契約による継続的なサポート

「ハラスメントに関する体制構築に向けて、具体的なアドバイスが欲しい」という企業様につきましては

顧問契約によるサポートをご検討いただけたらと存じます。

顧問契約による継続的なサポートをさせていただくことで、貴社で抱えている課題の整理から

課題の解決に向けたステップまで関与をさせていただくことが可能です。

顧問契約の詳細はこちらよりご確認いただけます。

ハラスメント問題に限らずに、貴社の経営上の法的サポートが可能です。

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