ECサイトの利用規約について知っておきたいポイント

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ECサイトに利用規約が必要な理由

クレーム予防・対策のため

利用規約を作る最大の目的は,クレーム予防・対策のため,です。サービスが軌道に乗り,利用者が増えると思いもよらないクレームやミスによるトラブルが発生することがあります。

利用規約は,トラブルが起きたとき,運営者を守るツールとして有用です。「利用規約〇条によりますと・・」といった具合に,カスタマーサポート担当者が利用者対応時に「拠って立つ基準」「防具」として機能します。円滑なサイト運営には,自社サービスを前提に,しっかり作り込まれた利用規約は必要不可欠といえるでしょう。

ユーザーに事業者が決めたルールに従ってもらうため

事業者がルールを決めなければ,サービス提供の際に適用されるルールは,民法等の法律「だけ」ということになります。しかし,法律の中には,そのまま適用するとサービス提供において様々面倒なことがあります。

たとえば,トラブルについて法的措置を取る場合の管轄裁判所の規定など,民事訴訟法や民法の原則通りに処理すると自社にとって不利に働く場合,利用規約で修正が可能です(管轄についていえば,利用規約において「訴額に応じ,東京地方(簡易)裁判所とする」と定めれば,大阪の会社相手でも東京で裁判をすることができます。

ただし,なんでも無制限に自社に都合の良い内容にすることはできません。たとえば,「一切責任を負いません」といった類の免責の範囲が不明瞭或いは過剰な免責文言は,消費者契約法により無効となります。

なお,法律には書いてないけど,サービス提供に当たり守ってほしいルールもあるでしょう。例えば,マッチングサービスで,マルチ商法の勧誘や保険の営業をする行為や,コミュニティの中で誹謗中傷や荒らし行為など・・。こういった行為を防止するには利用規約に明記する必要があります。

自社型ECサイトにおける利用規約作成のポイント

本コラムでは,ECサイト運営者自身でサイトを運営し,商品やサービス(以下,まとめて「商品等」と表記します)を販売・提供しているサイトを「自社型ECサイト」と称することとします。

自社型ECサイトでは,Amazonや楽天市場等,後述のモール型ECサイトと異なり,自社でイチから利用規約を作る必要があります。

そこで,自社型ECサイトにおける,クレームや利用者とのトラブルを予防するための利用規約のポイントを以下,まとめてみました。

商品等の説明・PR文が各法令に抵触していないか

ウェブサイト等いわゆるPRに使う媒体に関しては,景品表示法,消費者契約法,薬機法等の広告に関する規制が適用されます。また,食品に関しては食品表示法の規制も適用されます。これらの規制に違反する場合,悪質な場合,業務停止命令の対象になったり,莫大な課徴金を支払わなければならなくなることもありますので,各種法規制に反しないか,慎重に検討する必要があります。

契約成立時期が明確になっているか

一般的な取引では,買主が申し込みをし,売主がこれを承諾した通知が買主に「到達」した時点で契約が成立します。

ただし,ネットショッピングでは間違えてクリックしてしまったり,サイズや注文数を間違えて入力してしまうなど,操作ミスによるご注文が起きやすいという問題があります。そこで,電子契約法では,「操作ミスを防止するための措置を事業者が講じていない場合は,注文者に重過失があっても契約を取り消すことができる」とされています。

みなさんも,ネットショッピングをする際に,注文確定の前に,「この注文を確定しますか?」といったボタン表示を見たことがあると思います。これが電子契約法のいう「操作ミスを防止するための措置」です。このような注文確定ボタンを設定せずに,「今すぐ購入」でそのまま注文確定する設定にしてしまうと,あとから契約が取り消されてしまう事態が起きやすくなります。

このような契約取り消しリスクを回避するためには,「当社から注文完了(発送完了)のメールを送った時点で契約が成立するものとします」などと,利用規約で明記することが望ましいでしょう。

返品特約を設けているか・その内容が適法か

返品・キャンセルに期限を設けたり,タグを取り外してしまったものや一度使ってしまったものは返品不可にすることがあります。ただ,キャンセル料については,「同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」規約は消費者契約法9条1号に反し無効となります。

また,「一切苦情・返品受け付けません」というノークレームノーリターンの表示も,表示の方法・情報提供の内容等適切に定めておかないと特約が無効になってしまうことがあります。

適法な返品特約・キャンセルポリシーを定めて合理的な範囲でリスクを軽減しましょう。

ID・パスワード等個人情報の管理体制が整っているか,管理責任が明確か

ユーザーの個人情報を扱う事業者はすべて,個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」になります。個人情報取扱事業者は,個人情報保護法の定める情報保管管理体制を整えなければなりません。

モール型ECサイトに出店する場合の利用規約作成のポイント

本コラムでは,自社型ECサイトと異なり,Amazonや楽天市場,ZOZOTOWN等,1つのサイト上で多数の店舗が出店しているサイトを「モール型ECサイト」と称することとします。自社型ECサイトに関して述べたポイントは,モール型ECサイトで出店する場合にも同様に当てはまります。

ここでは,モール型ECサイト特有のポイントについて述べたいと思います。

自社店舗サイトとモールサイトの規約との間の整合性が取れているか

自社運営ECサイトと異なりモール型ECサイトの場合は,モール側の利用規約も存在します。モール側の利用規約と自社店舗サイトの利用規約に齟齬がある場合,モール側の利用規約が優先される旨,モール側の利用規約に明記されていることがあります。

自社店舗サイトとモールサイトの規約との間の整合性が取れているか,確認しておきましょう。

トラブル発生時の責任の所在が明確になっているか

モール側の利用規約においては,通常,ユーザー間の取引における代金不払い,商品・サービスの不具合等のトラブルについてモールサイト運営事業者側が責任を負わない旨明記されています。

モールサイトの利用規約を確認して,どのような損害が自社店舗において責任を負うものか明確にしましょう。

ECサイトの利用規約の作成方法

必要な項目

おおよそどのECサイトの利用規約でも必要になりそうな項目を,以下まとめてみました。

1 目的・適用範囲

ECサイトの場合,目的は「本サービスの提供条件及び本サービス利用に関する当社と登録ユーザーとの間の権利義務関係を定めることを目的とし・・」などと記載することが通例です。

適用範囲も,「登録ユーザーと当社との間の本サービスの利用に関わる一切の関係」といったように,広めに定めることが多いでしょう。

2 定義

利用規約中に出てくる文言の定義を一義的に定めておきます。

3 サービス内容

具体的なサービス内容を具体的に明示します。

4 ユーザー登録・ユーザー情報

登録の流れ,登録拒否事由,登録取り消し事由,登録事項の変更についてなど定めます。

5 契約成立(注文確定)時期

契約が成立して初めて,ユーザーと運営者との間に権利義務が生じるわけですから,どの時点を以て契約が成立するのか,一義的に明確に定める必要があります。

6 代金の支払い方法

振込,クレジットカードその他決済方法を明記しましょう。

7 所有権の移転・危険負担

運送中の紛失・破損等,いつの時点の損害から運営者が負うのかユーザーが負うのか,明確にしなければなりません。

8 返品特約

キャンセルポリシーとも言いますが,キャンセル・返品がどのような場合に可能なのかを明記しておきましょう。

9 禁止行為

トラブル回避或いはトラブルが生じた際の対応を明確にするために,想定される禁止行為を列挙しましょう。

10 契約解除

解除事由を明記しましょう。

11 非保証・免責

一切の責任を負わない旨の免責条項は無効になりますので,注意しましょう。

12 損害賠償責任

11同様,過剰な免責条項は無効になりますので,注意しましょう。

13 サービス内容の変更・廃止

14 秘密保持・個人情報の取り扱い

15 契約有効期間

16 規約の変更

17 準拠法・管轄裁判所

ECサイトの利用規約に関するお悩みは弁護士法人なかま法律事務所へ

ECサイトを様々見ていると,他社の利用規約をそのまま転載しているのでは?と思われる利用規約が散見されます。

同業他社の利用規約を参考にすることは良いのですが,「丸パクリ」はNGです。勿論著作権等権利関係の問題もありますが,何より他社の利用規約は,自社のサービスにそのままフィットしていないことが多く,結局トラブルになった時に使えない,といった事態を引き起こします。

当事務所では利用規約・プライバシーポリシーの作成・リーガルチェックに関するご相談への対応を行っております。規約をしっかりと整備をしていただくことで、リスク回避のみではなく事業を有利に進めていくための対策ができます。まずはお気軽にお問合せください。

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